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鳥類学ウェビナー

鳥類学ウェビナーとは?
 鳥類学ウェビナーでは、若手の会のメンバーをはじめ、鳥類を材料とした研究を行っている方を演者としてお招きし、オンラインで講演していただきます。不定期ですが、1~2か月に1回程度の開催を目安に実施いたします。一般参加ができる回と、若手の会会員のみが参加できる回があります。
 講演希望の方も募集しておりますので、希望される方は運営メールアドレス(ornithology.wakateあっとまーくgmail.com)までご一報ください。

第12回鳥類学ウェビナー(卒論・修論発表会)

・日時:2024年3月4日(月) 19:00~
・講演者、講演タイトル
   小島達樹: 北海道周辺海域と津軽海峡におけるウトウの食性の多様度
   安田和真: 温帯ブナ林において不定期に大発生するブナハバチへの鳥類群集の反応
   大島遥香: オナガガモの住血原虫感染に関連する生理的要因
   清水孟彦: 日本における沿岸性水鳥の生息地変化と群集トレンドとの関係性
   立川大聖: 渡良瀬遊水地の干し上げがコウノトリの生息地選択に及ぼす影響

第11回鳥類学ウェビナー

・日時:2023年12月1日(土)19:00~(発表40分、質疑応答30分)

・講演タイトル: 鳥類は祖先の地を辿って渡るか?―渡りルートの進化における歴史的制約の検証

・演者: 青木大輔 (森林総合研究所)

・要旨:

渡り鳥は、子孫を残す繁殖地と厳しい冬を乗り切る越冬地の間の、数千キロもの距離を毎年往復移動している。このダイナミックな移動には、種ごとに決まった渡りルートが存在しており、地球を覆うほど多様化している。なぜ鳥類の渡りルートはこれほどまでに多様なのだろうか?先行研究は、渡りルートが追い風や餌の豊富な地域を通るように適応進化したことを明らかにしてきた一方、そのような適応形質が種間で異なる根本的な理由は未解明であった。本研究では「鳥類は種ごとの祖先の分布域を辿るように渡る」というユニークな仮説に着眼し、渡りルートの進化における歴史的制約の役割について検証を進めている。本発表では、日本の複数鳥種・複数箇所において実施中のGPSやジオロケーターといった渡り追跡装置による渡りルート追跡手法から、種分布モデルや空間シミュレーション等を活用した生物地理学的手法による渡りルートの進化プロセス推定について紹介する。

第10回鳥類学ウェビナー

・日時:2023年8月26日(土)19:00~
・講演タイトル:鳥類の羽ばたき能力を示す烏口骨強度

・講演者:明田卓巳(名古屋大学大学院 環境学研究科 地球環境科学専攻 地球史学講座)
・要旨:

 前肢駆動の羽ばたき運動は,流体中の推進を可能にする運動である.鳥類は,祖先である恐竜から進化する過程で羽ばたき能力を獲得し,空中へ進出した.この進化イベントは,初期鳥類の生態学的機会の拡大を促し,現生鳥類の多様性に貢献したと考えられている.一方,鳥類が羽ばたき能力を獲得するまでの進化過程は未解明である.そこで本研究では、絶滅した分類群の羽ばたき能力の復元を目指し、古典力学に基づいた鳥類の羽ばたき能力の定量的な骨格指標の解明を目的とした。羽ばたき運動時の筋収縮による負荷を受ける烏口骨に着目し,曲げに対する抵抗力を220種の鳥類で比較したところ,鳥類が羽ばたくには十分に高い曲げ抵抗力をもつ烏口骨が必要であることが分かった.さらに,羽ばたく鳥類の中でも羽ばたき方ごとに違いがみられ,鳥類では烏口骨の強度が羽ばたき能力の指標になることが示された.この指標は鳥類に限らず,恐竜から進化する過程で,羽ばたき運動が始まった時期をより確からしく推定できる可能性がある.

第9回鳥類学ウェビナー(卒論・修論発表会)

・日時:2023年2月27日(月) 20:00~
・講演者、講演タイトル
 武廣一輝:都市部におけるワカケホンセイインコの生息地選択
 市原晨太郎:鳥取環境大学構内における鳥の窓ガラス衝突と紫外線カットフィルムを使った対策の効果
 田谷昌仁:A clear dietary segregation of food items among coexisting birds revealed by fecal DNA metabarcoding of shorebirds in a stopover site in Japan (フンのDNAメタバーコーディングによって明らかになった日本の渡り中継地で共存するシギ・チドリ類の食性の明確な分離)

第8回鳥類学ウェビナー

日時:2022年8月27日(土)17:00~(発表40分、質疑応答30分)
・講演タイトル:生物多様性指標としての頂点捕食者の有効性評価

・講演者:夏川 遼生(スペイン科学研究高等会議)
・要旨:

 現在、地球上で生物多様性が急速に減少している。生物多様性を保全するには多様性の高い地域を特定する必要があり、それを効率的に実施する方法の一つとして、生物多様性指標の使用が提案されている。頂点捕食者は優れた生物多様性指標と考えられているが、その有効性には一貫性がなく、一般化した結論には至っていない。これらの背景を受けて、本発表では、地域規模の事例研究と地球規模のメタ解析により、生物多様性指標としての頂点捕食者の有効性を再検証した結果を紹介する。事例研究では、オオタカ(Accipiter gentilis)の繁殖地周辺において鳥類と木本植物の多様性を調査し、無作為に選定した対照地においても同様の調査を実施した。これらを統計的に比較した結果、鳥類と木本植物の両方で、オオタカ繁殖地が非繁殖地よりも高い多様性を保持することを確認した。次に、上記の事例研究と先行研究の結果をメタ解析により統合し、生物多様性指標としての頂点捕食者の有効性を総合的に評価した。その結果、平均すると、頂点捕食者は生物多様性指標として機能することが示された。また、頂点捕食者の指標性能は彼らとの相互作用が強い分類群(すなわち、餌資源や主要な生息場所といった彼らの生活に必要な資源を提供する分類群)を対象とした場合に高くなり、相互作用が弱い分類群(上記の資源を提供しない分類群)を対象とした場合に低くなることが明らかになった。以上の結果から、頂点捕食者を使用した保全計画は生物多様性保全に貢献できると考えられるが、これまでに報告されている他の生物多様性指標と同様に、あらゆる分類群の保全に有効であるとは限らないことを認識する必要がある。したがって実用の際には、頂点捕食者と保全対象になる分類群間の相互作用を考慮することが重要である。

第7回鳥類学ウェビナー

日時:2022年6月27日(月)19:00~(発表30分、質疑応答20分)
・講演タイトル:鼻腔に着目して俯瞰する恐竜類-鳥類の頭骨進化 Cranial evolution of dinosaurs with reference to the nasal cavity

・講演者:多田誠之郎(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻D2、国立科学博物館地学研究部、日本学術振興会特別研究員)
・要旨:

 鳥類は非鳥類恐竜類から身体の随所に大きな変化を遂げて現在の姿へと進化した。頭部領域はその中の一つであり、これまでも様々な組織や構造に着目してその進化過程を理解しようとする試みがなされてきた。
 本ウェビナーでは、先行研究であまり注目されてこなかった鼻腔に着目した研究を紹介する。はじめに、鳥類が鼻腔内に持つ鼻甲介と呼ばれる特徴的な構造も含め、鼻腔が有羊膜類において果たしている役割を議論する。その上で、恐竜-鳥類系統で見られる鼻腔の進化シナリオから示唆されるその生理学的機能の変遷と頭骨進化との関係について考察していく。

第6回鳥類学ウェビナー(卒論・修論・D論発表会、内部向け)
・日時:2022年3月5日(土)20:00~
・講演者、講演タイトル
  清水孟彦:博多湾の沿岸性湿地とその周辺環境におけるヘラサギ類の環境選択
  犬丸瑞枝:生態区分に基づく国内の鳥類における住血原虫感染状況の解明
  本多里奈:なぜ混合コロニーは形成されるのか?-カワウ・アオサギ混合コロニーに着目して-
  水村春香:開放地性鳥類の多様性と希少種の分布に関係する草原管理方法と環境要因

第5回鳥類学ウェビナー
・日時:2021年12月23日(木)19:00~(発表約30分、質疑約20分)
・講演タイトル:Highly mobile seed predators contribute to interisland seed dispersal within an oceanic archipelago
        移動能力の高い種子食者が島間の種子散布に貢献する

・講演者:安藤温子(国立環境研究所)

・要旨:

 大陸と一度も繋がったことのない海洋島に植物が定着し、分布を広げるためには、大陸から島へ、そしてある島から別の島へ種子が運ばれなければならない。しかし、そのような長距離に及ぶ種子散布が生じるメカニズムについては十分に解明されていない。カラスバト Columba janthina は、日本列島と朝鮮半島周辺の離島に生息し、生息地の島々を移動することが知られている。本種は主に果実を食べるが、強力な砂嚢を持っているため飲み込まれた種子の多くは破壊されると考えられてきた。しかしカラスバトの糞を分析した結果、全体の45%から破壊されていない種子が検出され、本種は無視できない頻度で種子を散布していることが明らかになった。また、伊豆諸島の八丈島と4km離れた八丈小島の間を、最大で1日延べ5000羽近いカラスバトが移動し、それに伴い島間を植物種子が運ばれることが確認された。各島での個体数の変化から、本種は伊豆諸島内のより遠い島へも移動していることが示唆されている。本種の飛行速度や種子の体内滞留時間を考慮すると、理論的には八丈島から伊豆諸島のほぼ全域に渡って種子が散布されうる。海洋島における植物の移動分散には、カラスバトのように移動性の高い鳥類が貢献していると考えられる。

 

第4回鳥類学ウェビナー
・日時:2021年8月29日(日)19:00~(発表約30分、質疑約20分)
・講演タイトル:水鳥の移動経路としての都市河川

・講演者:竹重志織(放送大学大学院、日本学術振興会特別研究員)

・要旨:

 都市で生物多様性を保全するためには、生息地と合わせてその間の移動経路を維持整備する必要がある。河川は、ねぐらと採餌場所を日々行き来する複数種の水鳥によって、移動に頻繁に利用されることがわかっている。しかし、河川は水鳥の採餌場所や休息場所等としての保全が行われてきた一方で、移動経路としての保全のための研究はまだ少ない。加えて様々な景観要素がモザイク状に分布する都市で、⽔⿃が選択的に河川を移動しているか否かは明らかではない。そこで、本研究では東京都東部の河川とその周辺も含む市街地にて、水鳥の移動状況の調査を実施した。4種の水鳥(ユリカモメ・カワウ・セグロカモメ・ウミネコ)を対象に、移動に影響する環境条件を分析したところ、水域面積の大きな河川ほど移動経路として機能していることおよび、流路直上に沿った構造物が移動経路としての河川の価値を低下させることがわかった。本ウェビナーでは、各環境条件の影響の程度が種間で異なる点や今後の課題についても議論していく。

第3回鳥類学ウェビナー (卒論・修論・D論発表会、内部向け)
・日時:2021年4月25日(日)20:00~
・講演者、講演タイトル
  立石淑恵:東北地方におけるチゴハヤブサの繁殖生態とつがい数の推移
  田谷昌仁:小翼羽の形態進化-系統に強く制約されたかたちの変化-
  中原亨:外来種カササギの営巣場所選択-侵入初期の苫小牧周辺地域における現状把握-

第2回鳥類学ウェビナー
・日時:2021年1月30日(土)19:00~(発表約30分・質疑約20分) ※終わった後、2時間ほど懇親会を開催します。
・講演タイトル:局地的な分布を持つ渡り鳥、ノジコの選好環境

・講演者:出口翔太(福井市自然史博物館)
・要旨:
 ノジコはスズメ目ホオジロ科の渡り鳥で、世界中で本州でのみ局地的に繁殖する。IUCNのレッドリストでは危急種(VU)に選定されており、生息地の破壊が脅威の一つとなっている。しかし本種の選好環境はよく分かっておらず、局地的な繁殖分布は本種の限定的な選好環境を反映している可能性がある。
 本研究では、なわばりと繁殖分布の2つの空間スケールで本種の環境選好性を検証した。その結果、本種の環境選好性は空間スケールによって異なることが示された。分布スケールではノジコの生息は積雪深と地層の第三紀層の分布、標高と関連が認められたが、なわばりスケールでは雄の個体数と林縁密度、地すべり面積の間に正の関係性が認められた。本ウェビナーでは、ノジコの繁殖生態と関連付けて、これら環境要因の重要性を考察する。また本種の局地的な分布の理由について、本種が過去に大量捕獲されていた事実にも触れ、今後の課題を示す予定である。

第1回鳥類学ウェビナー
・日時:2020年10月10日(土)19:00~(講演30分・質疑15分)
・講演タイトル:「小笠原諸島の鳥類における血液寄生原虫および鳥ポックスウイルス保有状況」
・講演者:犬丸瑞枝(日本大学大学院 獣医学研究科 D3 日本学術振興会 特別研究員DC1)
・方法:Zoomによるオンライン講演
・要旨:
 ハワイ諸島の固有ミツスイ類が絶滅した主な原因として、移入鳥種とともに持ち込まれた鳥マラリア原虫と鳥ポックスウイルス(APV)の感染が挙げられている。小笠原諸島はハワイ諸島と同様に固有鳥種と移入種が混在しているが、これら病原体の感染状況は不明であった。そこで、同諸島における鳥類血液寄生原虫およびAPVの保有状況を調べた。鳥類および蚊からDNAを抽出し、各病原体の遺伝子をPCRにより検出した。留鳥294羽中150羽および蚊262頭中13頭から原虫DNAが検出され、父島内で感染環が成立していると考えられた。留鳥の保有率は渡り鳥より有意に高く、共通する原虫系統も少ないため、渡り鳥-留鳥間の感染は稀であり、新たな原虫が持ち込まれる可能性は低いと考えられた。また、メジロおよびトラツグミから原虫およびAPVが検出され、いずれも宿主鳥類と共に持ち込まれた可能性がある。希少種保全のため、今後も他の島を含めたさらなる調査が必要である。

第7回鳥類学ウェビナー

日時:2022年6月27日(月)19:00~(発表30分、質疑応答20分)
・講演タイトル:鼻腔に着目して俯瞰する恐竜類-鳥類の頭骨進化 Cranial evolution of dinosaurs with reference to the nasal cavity

・講演者:多田誠之郎(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻D2、国立科学博物館地学研究部、日本学術振興会特別研究員)
・要旨:

 鳥類は非鳥類恐竜類から身体の随所に大きな変化を遂げて現在の姿へと進化した。頭部領域はその中の一つであり、これまでも様々な組織や構造に着目してその進化過程を理解しようとする試みがなされてきた。
 本ウェビナーでは、先行研究であまり注目されてこなかった鼻腔に着目した研究を紹介する。はじめに、鳥類が鼻腔内に持つ鼻甲介と呼ばれる特徴的な構造も含め、鼻腔が有羊膜類において果たしている役割を議論する。その上で、恐竜-鳥類系統で見られる鼻腔の進化シナリオから示唆されるその生理学的機能の変遷と頭骨進化との関係について考察していく。

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